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番外編②労働保険の年度更新をエクセルの計算支援ツールを使用して電子申請するためのメソッド

番外編②労働保険の年度更新をエクセルの計算支援ツールを使用して電子申請するためのメソッド

番外編①は、社会保険の算定基礎届の提出と労働保険の年度更新をまとめて一気に仕留める予定でしたが、なんだかんだ盛り込んでいるうちに長くなったので、2つに分けました。

両者には違いがあり、社会保険の算定基礎届は4~6月のその月の支払分を記入します。すなわち、末締め翌月10日払いだと、4月10日、5月10日、6月10日の支払額(3月、4月、5月分給与)を記入します。

なお、この場合、改訂後の社会保険料を徴収するのは、翌月控除の場合、10月10日(9月分給与)からとなります。

規定で「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は原則9月から翌年8月までの各月に適用されると決まっているからです(翌月控除のため10月10日の支払分より)。

一方で、労働保険の年度更新は前年度4月から当年度の3月までの発生月分を記入します。すなわち、末締め翌月10日払いだと、5月10日、6月10日~翌4月10日の支払額(4月、5月~翌3月分給与)を記入します。

同じような保険でも全然違うんですね。

今回の記事は、労務関係の1年に1回の申請、労働保険の年度更新の手続の概要について書いていきます。

締め日、当月/翌月払いによって異なることを社労士事務所はなぜか教えてくれない

労働保険の年度更新

厚生労働省の公開している「年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用)」を使って、e-gov(イーガブ)で電子申請することを目標とします。

これだと、計算結果だけをe-govに打ち込んでいけばよいので、特段エラーもなくサクサクと進みます。

完全に業務がオンライン化されるわけではないですが、最も簡易な手法です。

e-gov(イーガブ)で悩まずに申請できるのがBest Solutionであると考えます。

算定基礎賃金集計表への記入

給与計算システムより各月の「支給(控除)額一覧表」を12か月分集め、労働保険対象者の賃金合計と人数を記載していきます。

労災保険(左側)と雇用保険(右側)で微妙に書き方が異なります。まずは労災保険(左側)から。

(1)常用労働者の欄に、雇用保険対象者(フルタイム+パートタイム)
(3)臨時労働者の欄に、雇用保険非対象者(パートタイム)

の賃金合計と人数を記載。次に、雇用保険(右側)。

雇用保険非対象者(パートタイム)が無くなり、被保険者(フルタイム+パートタイム)と雇用保険対象者(フルタイム+パートタイム)を免除対象高年齢労働者に区分して記載します。

令和2年3月で、免除対象高年齢労働者の雇用保険料免除措置も終了したので、その計算表も来年度から新しいフォーマットになります。

申告書記入イメージのe-gov(イーガブ)への入力

計算支援ツールのいいところで、バリデーションチェックの分かりづらいe-gov(イーガブ)の入力内容が、自動で「申告書記入イメージ」に転記、出力されます。

あとは指示に従って、順番通りオンラインで記入していけば、あっという間に申請完了です。

これだよこれ、こういうのを待っているのです。自動ツール万歳。

あとは、会社情報と申請者情報を記入して、電子納付額の送られてくるメールアドレスを登録すれば終了。

一括納付を選択する必要もないので、3回の分納にしておくとキャッシュフロー管理的にも良いです。

労働保険における工夫の余地

労働保険(雇用保険、労災保険)は、従業員への毎月の給与支給額総額に対して一定の掛け率が決まっているので、匙加減でコントロールできる余地が限りなく少ないです。

できるとすれば、雇用者都合で労働保険(雇用保険、労災保険)に加入させないとかになるので、それはそれで問題あり。良い経営者とは言えませんね。

なので、メリットを生むには、ずばり、使用人兼務役員をうまく使うことです。

労災保険(左側)にそういえばもう一つ記入欄がありました。

(2)役員で労働者扱いの人(実質的な役員報酬分を除く)

かなり使えます。会社にとっては損金算入の節税メリット、就任する方(役員)にも雇用保険によるセーフティーネット・モチベーションアップの労務メリットが得られます。

名より実を取るべきでは。

使用人兼務役員になれないケース

国税庁の公表している指針によれば、以下の者はなれません。

1 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
2 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
3 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
4 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります)、会計参与及び監査役並びに監事
5 1から4までのほか、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、次の全ての要件を満たす役員

逆に言えば、それ以外の平取締役で、特に肩書を気にしないでいいのであれば、圧倒的に使用人兼務役員の方がお得です。

使用人兼務役員のメリット①-給与支給額の増減・賞与経費算入が可能

従業員相当分は、役員の定期同額給与、賞与の損金不算入の影響を受けません。

役員の給与、賞与についてはお手盛りによる恣意的な配分を防ぐ意図により、厳格な支給要件と、安易な改定ができないようになっています。

ところが、従業員相当分であれば、他の従業員と同様の支給基準に則っている限り、期中における給与改訂、業績に応じた額での賞与支給が可能です。

つまり、儲かった年は儲かった分還元し、業績の厳しい年は減らすこともできます。運用面の自由度が高いですね。

いずれにせよ、給与、賞与の双方に役員分と使用人分が混在するので、区別を明確にした上で支給しないと、税務調査で痛い目にあいます。

まあ、来ると分かってからでもなんとかなりますが。

使用人兼務役員のメリット②-雇用保険に加入できる

セーフティーネットという意味で実にバリューは大きいです。

通常、役員は委任契約となるので、終了したらそれまでです。ばいばい!

従業員兼務する取締役の雇用保険被保険者資格要件証明書、労働者名簿、賃金台帳当を用意するなど、多少のハローワークでの手続が必要ですが、それにも増して雇用保険に加入しているメリットは大きいでしょう。

使用人兼務役員のメリット③-中退共に加入できる

中小企業退職金共済制度(中退共制度)に加入できます。

中退共制度とは、

中小企業退職金共済制度(以下、中退共制度)は、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業について、事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって退職金制度を設け、中小企業で働く方々の福祉の増進を図り、中小企業の振興に寄与することを目的としています。(中退共HPより)

中小企業退職金共済制度の加入のメリット
①掛金の負担軽減措置…中退共制度では、新規加入時には従業員ごとに最高6万円を国が減額します。(一部除外あり)

②掛金は損金または必要経費として全額非課税…掛金は損金または必要経費として全額非課税とされます。

③手続きが簡単かつ、きめ細やかなサービス…掛金納付は口座振替で手間がかかりません。従業員ごとの掛金の納付状況や退職金資産額は毎年、事業主にお知らせします。上記以外にも、掛金の管理・運用が安全であること、中退共制度加入前の勤務期間の通算が最高10年の範囲で可能であることといったメリットがございます。(中退共HPより)

会社にとっても全額損金にすることができるので、節税対策になりますし、社内に退職金制度を作ることなく外部に丸投げできて業務の簡略化ができます。

退職給付会計導入しないで済むのもいいね(財務経理担当者の立場)。

まとめ(労働保険の年度更新)

計算支援ツールが用意されてるので簡単。後は、名より実を取れるかだが

エクセルツールを使用することで計算と電子申請が容易になる

エクセルの「年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用)」を併用するので、完全にオンライン化されているわけではありませんが、業務効率は圧倒的に良くなります。

トータルで最も使いやすく、また年に1回の手続を、翌年度以降も再現性の高いルーチン業務に落とし込むことこそ最優先で考えるべきことかと思います。

名(肩書)よりも実(旨味)を取るべきか

学生時代(と3次試験の受験生時代)に会社法を学んでいたときは、使用人兼務役員、なにそれダサくない?などと不埒なことを考えていました。

しかしながら、現場に出て会社実務、税務実務に触れるようになってからは、使用人兼務役員の旨味を知りました。

なるほど、制度というものは実に知っているものにとっていいように、メリットのあるように出来ているようです。

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